奈良県の国道24号線沿いに、常緑広葉樹の樹々が植えられた区域があります。ときどき通るので、そのたびに見ていますが、大きく育ち、秋にはたくさんの木の実が落ちています。樹の枝が道路に伸びて、管理も大変のようですが、植樹の意義などを想像してみました。
国道沿いの常緑広葉樹の樹々
植えられた経緯
橿原市内の24号線の両側に常緑広葉樹の並木が見られます。
このようにまとまって植えられているのを、あまり見かけないようなので、
何か謂(いわ)れがあるかもと思っていましたが、たまたま読んだ本で、
植えられた経緯を知りました。
横浜国立大学名誉教授の宮脇昭氏の指導で植えられたとのことです。
同氏の著書「木を植えよ!」に詳しく載っています。
1982年に、15,000本の幼苗が環境保全と災害防止の目的で、小中学生によって植樹されたとのことです。
植林した当時小中学生だった人達は、この道を通るたびにこの樹々をみて懐かしく誇らしく思うのではないでしょうか。
氏の持論である、「その土地に合った樹(潜在自然植生)を密に植える」方法にそって、
かなりの密植に植えられ、並木が見事に育っています。
ここ以外の日本各地でも、同じように植樹されているようです。
宮崎昭著:「木を植えよ!」について
「木を植えよ!」には、「鎮守の森」が、日本の代表的な土地に適応した植物群落であり、
シイ、タブ、カシ類の高木層、ヒサカキ、万両などの低木層と、
その中間の亜高木層(ソヨゴ、アカメガシワなど)によって構成される多層群落であるとしています。
そして、人工林主体での森林ではなく、潜在自然植生である常緑広葉樹に戻すべきと説かれています。
このほか、常緑広葉樹の利点がいろいろ述べられています。一読の価値があると思います。
私は、この本で、つぎの言葉に強い印象を受けました。
「人間は森の寄生者でしかない」
「木を植えよ!」では、ドイツの陸水学者A.ティーネマンによる次の生物の分類を示し、
- 緑色生物・・・無機物から有機物を合成する生産者
- 動物・人間・・・有機物の消費者
- バクテリア・菌類・・・有機物を分解する分解・還元者
人間は森の寄生者でしかなく、植物の消費者としてしか持続的に生きていけない。
このことを理解して都市作り、経済活動を行うことが必要であるとしています。
私はこの本でもっとも一番印象に残ったのがこの部分です。
まさに、我々はこのことをよく考えて活動を行っていく必要があるのだろうと思います。
現在の人類は、化石燃料によって成り立っていると言っても過言でないと思います。Wikipediaでは、化石燃料を次のように説明しています。
地質時代にかけて堆積した動植物などの死骸が地中に堆積し、長い年月をかけて地圧・地熱などにより変成されてできた、言わば化石となった有機物のうち、人間の経済活動で燃料として用いられる(または今後用いられることが検討されている)ものの総称である。
Wikipedia 「化石燃料」
いまさらのことではありますが、人類が繁栄し、持続できてきたのは、植物が作り上げた石炭や石油を利用することによってのことだろうと思います。
しかし、化石燃料に閉じ込められた二酸化炭素を再び大気に戻して温暖化を招き、
限りある燃料を使って成り立っている今の社会は、いつまで続けることができるのでしょうか。
新しいエネルギーを見いだせればいいのでしょうが、可能なのでしょうか。
私たちが、避けることのできない課題だと思います。
常緑樹の並木に思うこと
国道から脇道に入って樹の様子を見たことがありますが、タブ、シャリンバイ、ウバメガシ、
その他の樫などが順調に育っているように見受けられます。
そして、秋には樹の根元近くにドングリなどの木の実がたくさん落ちています。道路上にも並木の沿って転がっているのが見られます。
樹は競って高く伸びているように見えます。枝も元気によく伸びて、道路方向にも広げてきているようですが、
交通の妨げにならないように、枝を切っているのが見られます。
当然のことですが、樹はそのままにしておくと上に伸び、横に枝も出てくるので交通の邪魔になってくるはずで、
手入れが課題になっていくのだろうと想像しています。
植樹して育ってくるまでは、待ち遠しく、まだかまだかと思いますが、育ってくると、
今度は管理が課題になるのは仕方のないことなのかもしれません。
今後、どのように育って(育てて)いくのか、手入れがどのようにされていくのかなど、
よく通る道なので見続けたいと思います。
落ちたドングリや葉などの清掃も必要でしょうし、樹の剪定も大変だろうと思いますが、
せっかく育ってきた樹々を守っていってもらいたいと思います。
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