コムラサキ(小紫)とムラサキシキブ(紫式部)はよくにており混同されがちです。両者の主な違いは、コムラサキは園芸品種として栽培され、樹高は1mほどですが、ムラサキシキブは、山野に自生し、3mほどになります。ここでは、両者の詳細と、違いをまとめました。
園芸品種のコムラサキと、野生種のムラサキシキブの違い
コムラサキ(小紫)とムラサキシキブ(紫式部)の違い
最初に、コムラサキとムラサキシキブの違いをまとめておきます。
両者は、よくにた落葉低木ですが、つぎのように、葉の鋸歯、花の付き方や樹の大きさに違いがあります。
コムラサキ(小紫) | ムラサキシキブ(紫式部) | |
葉の鋸歯 | 葉の上半分 | 葉の全周 |
花序のつき方 | 葉柄の上部 | 葉柄の付け根 |
枝の付き方 | 枝が垂れる | 枝が上向く |
樹の大きさ | 1m程度 | 2~3m |
なお、小紫はよく庭木にされていますが、紫式部と呼ばれることが多いようです。
いかに、コムラサキとムラサキシキブの違いについて述べます。
コムラサキ(小紫)
コムラサキの花や実
畑の隅にコムラサキ(小紫)の樹が自生しています。ムラサキシキブ(紫式部)かと思っていたのですが、調べたところ小紫でした。
8月のいま、根元から先の方に向かって、つぎつぎと花が咲いていますが、花が咲いた後には、たくさんの丸い小さな実(写真の左側)をつけます。
花期は7~8月で、葉腋から少し離れた上から集散花序をだし、淡い赤紫の花を10~20個ほど咲かせます。
花は、このような薄紫いろの可愛い小さな花が、上を向いて咲いています。
花びらの長さは3mmほどの合弁花で、上部は4裂しますが、
雄しべは4本、雌しべは1本で、花の先に元気に飛び出しており、花粉を収めた黄色いヤク(葯)が目立ちます。
この写真は、枝先から根元方向につぼみを撮った写真です。
つぼみの集まり(集散花序)は、対になって出た葉(対生)の付け根から少し離れた上部から出ています。(手前が枝先になります。)
花のあとには3mmほどの実がつき、秋になると綺麗な紫いろに熟します。
こちらは、10月に撮ったものですが、たくさんの小さな実がまとまってついています。
この樹は、鳥がタネを運んできて、落とし芽をだして大きくなったのでしょうか。植えていないのに、いつの間にか生えてきました。
ヒヨドリ、キビタキなどの鳥によって食べられ、種子散布されるといわれます。
コムラサキの葉も見てみたいと思います。
写真のように、短い葉柄(1~4mm)があり、枝に対生しています。
葉の大きさは長さ3~7cm 幅1.5~3cmの長い楕円形で先がとがっており、上部には、粗い鋸歯が見られます。
樹高は1m程度でしょうか。のびた枝の先は垂れ下がり、株立ちになってふえています。
コムラサキの基本情報・花言葉
コムラサキ(小紫)は、中国、朝鮮半島、台湾や日本の本州から沖縄に自生するシソ科コムラサキシキブ属の落葉低木です。
比較的湿気の多いところに自生しますが、庭木として良く植えられます。
名前は、近縁種のムラサキシキブに較べて小さいことに由来しますが、ムラサキシキブと呼ばれて販売されているものは、コムラサキの場合が多いといわれます。
別名に、コシキブ(小式部)、コムラサキシキブ(小紫式部)があります。
学名は、Callicarpa dichotoma
英名は、Komurasaki tree、Japanese beautyberry
花期は7~8月で、葉腋から少し離れた上から集散花序をだし、淡い赤紫の花を10~20個ほど咲かせます。
花びらの長さは3mmほどで、上部は4裂します。
雄しべは4本、雌しべは1本で、花の先に飛び出します。
実は核果(硬い皮で包まれた種を果肉が包みます)で、大きさは直径3mmほどの球形、9~10月ごろに紫に熟し、
ヒヨドリ、キビタキなどの鳥によって食べられます。
葉は対生し1~4mmの葉柄があり、長さ3~7cm 幅1.5~3cmの長い楕円形で先がとがり、
葉の上部には、粗い鋸歯がつきます。
枝は紫いろを帯び、初期には星状の毛がつきますが、その後無毛になり、枝先は垂れ下がります。
樹皮は黄褐色で平滑ですが、淡褐色の皮目が見られます。
樹高は2mほどで、ムラサキシキブ(3mほど)にくらべて低くなります。
小紫の花言葉は、「聡明」「気品」「知性」で、11月15日の誕生花です。
いい花言葉ですね。コムラサキの苗はこちらでも、販売されています。
ムラサキシキブ(紫式部)
ムラサキシキブの花や実
こちらは、実をつけた紫式部です。
写真をよく見ると、実をつける果柄は、コムラサキとは違って葉の付け根から出ていることがわかるかと思います。
また、葉には全周にわたって鋸歯がついています。
また、この写真では少しわかりにくいのですが、
コムラサキ(小紫)は、1m程度の高さ以上にはならず、枝は垂れ下がりますが、
ムラサキシキブ(紫式部)は、3m程度の高さになり、枝は上向きます。
同じ低木といっても、違いがあるんですね。
ムラサキシキブの基本情報・花言葉
ムラサキシキブ(紫式部)は、中国、朝鮮半島、台湾や、日本全土に自生するシソ科ムラサキシキブ属の落葉低木です。
名前は、紫いろの実をムラサキシキブにたとえたといわれます。
別名は、ミムラサキ、コメゴメ、タマムラサキなど。
学名は、Callicarpa japonica
英名は、Japanese beauty berry
花期は6~8月で、葉の付け根から集散花序をだし、淡い紅紫の花を咲かせます。
花びらの長さは3~5mmで、上部は4裂し、雄しべが4本、雌しべが1本つき、花から飛び出ます。
実は、直径3mmほどの球形で、コムラサキよりまばらにつき、秋に紫に熟します。
葉は対生し葉柄は2~7mm、長さ6~13cm 幅2.5~6cmの長楕円形で先がとがり、縁に細かな鋸歯がつきます。
枝は初期には細かな星状の毛が見られますが、時間とともに消えます。
樹高は3mほどで、樹皮は灰褐色になります。
よくにた植物に、花や実が白いシロシキブ(白式部)、花や実が大きなオオシロシキブ、シロミノコムラサキなどがあります。
また、花や葉に毛が多い、ヤブムラサキなどがあります。
紫式部の花言葉は、「上品」「愛され上手」で、10月17日、10月18日、10月21日、11月4日の誕生花です。
なお、「紫式部(ムラサキシキブ)」の名前は、紫色の実の清楚な美しさを、紫式部にたとえたものと言われています。
参照サイト・書籍
庭木図鑑 樹木ペディア コムラサキ ムラサキシキブ ヤブムラサキ
季節の花 300 シロシキブ
みみみんブログ コムラサキとムラサキシキブの花言葉
城川四郎他解説 山と渓谷社 「山渓ハンディ図鑑5 樹に咲く花」