シマスズメノヒエ(島雀の稗)は、イネ科の多年草で、南アメリカ原産の帰化植物です。日本では本州から沖縄までの道端、草地、あぜ道などに広く分布します。花期は6~10月頃で、茎先に数本の総状花序を出し、小穂を密につけます。小穂の縁に白い長毛があり、黒紫色の葯や柱頭が目立つのが特徴です。
野原で生きるシマスズメノヒエ(島雀の稗)
シマスズメノヒエの花

人家沿いの土手の草地に、写真のような、毛虫かと間違いそうな穂が目に入りました。
オヒシバのような野草ですが、穂の片側が黒くなっており、違うようです。調べて見ると、スズメノヒエの仲間のようです。
写真のタイトルからわかるように、毛虫のように見えるものは小穂が連なっていて、総と呼ばれ、それが3個ついて花序を形成しているとされます。総の下に黒いものが出ているのは、雄しべとのことです。
スズメノヒエ(雀の稗)は、日本在来種です。最古の穀物として食べられてきたヒエ(稗)ににていますが、穂や実が小さく、人の食用にならないため、雀がたべるようなヒエだとして命名されたようです。
余談ですが、スズメの名が冠された植物には、スズメノヤリ、スズメノテッポウ、スズメノカタビラなどがあります。
近縁種が多く、シマスズメノヒエ、アメリカスズメノヒエ、キシュウスズメノヒエなどが知られています。
写真の植物がどれになるのか、調べたのですが、在来種の花序の形などから、スズメノヒエか、シマスズメノヒエのどちらかだと絞り込み、最終的にシマスズメノヒエだと判断しました。
「シマ」とつくのは、本種が、大正時代に小笠原諸島で初めて発見されたことから、島嶼部(トウショブ)を経由して渡来したことによります。
南アメリカ原産のイネ科の多年草で、第二次世界大戦後の物資輸送や牧草の導入に伴って侵入・定着し、いまは、関東以西の太平洋側などに分布しているとされます。
別に、そこまで調べる必要もないのですが、やはり気になります。

こちらが、シマスズメノヒエと判断した根拠の写真です。
前の写真を拡大したものです。楕円状のもの(小穂と呼ばれ、この中で花が咲き、実がつきます。)が、連なっています。
その上にふわっとした白く長い毛がみられます。また、小穂の下に黒い雄しべがでています。この点が、スズメノヒエとの違いです。
スズメノヒエの雄しべは、黄色くなり、白い毛はありません。
インターネット上には、いろんな解説のサイトがあり、助けていただきました。

こちらは別の株です。総が4個ついています。いろんな野草が競い合って生きているなかで、負けずに頑張っているようです。

中には、このように茶色くなったものもあります。何らかの理由で枯れたのでしょうか、それとも、実が熟したのでしょうか。
シマスズメノヒエの葉、茎

他の野草が写っているので、はっきりわからないかと思いますが、地面から茎が伸びて、葉がついています。
葉は茎に互生しますが、間隔を置いて、数は少なくついています。
長さ10~25cm(大きなものは30cm近く) 幅は5~12mmほどで、形は細長い線形から線状披針形で、先端に向かって次第に鋭く尖っています。

葉には鋸歯がなく全縁です。
また、葉柄がなく、表面に毛も見られず、茎を包むようについています。

こちらは、根元です。
何本もの茎が地面から伸びて、力強く広がって伸びています。
偶然に見かけたシマスズメノヒエですが、調べて見ると、いろんなことが見えてきて興味深く思います。
シマスズメノヒエの基本情報
原産地、分類、特徴
シマスズメノヒエは、南アメリカ(アルゼンチンやウルグアイ、ブラジル南部など)原産で、ツユクサ類イネ目イネ科キビ亜科キビ連スズメノヒエの多年生です。
日本へは第二次世界大戦後の物資輸送や牧草の導入に伴って侵入・定着したとされ、現在では本州(関東地方以西・太平洋側の暖地)から四国、九州、沖縄にかけての道端、河川敷、空き地、などに野生化しています。
特徴は、硬く頑丈な株をつくり、夏から秋にかけて花茎を高く伸ばして特徴的な花序を形成する点にあります。花序は主軸に対して直角に近い角度で大きく開き、その枝の片側に偏平な卵形の小穂をびっしりと並べます。
耐暑性や乾燥に対する耐性が強く、踏みつけや頻繁な刈り込みにも耐える強靭な生命力を持ち、日当たりの良い荒地や路傍でしばしば大群落を形成します。
在来種であるスズメノヒエとの違いは、小穂の形態、雄しべと雌しべの色、植物体全体の毛の生え方、そして花序の配列などになります。
まず小穂の様子について、スズメノヒエの小穂は円形に近い楕円形で表面や縁に毛がほとんどなく平滑であるのに対し、シマスズメノヒエの小穂は先がやや尖った広卵形で、第2苞穎の縁に白色の長い圧毛(絹毛状の毛)が密生しています。
また、花(葯と柱頭)の色について、スズメノヒエは葯が鮮やかな黄色で柱頭が黒紫色であるのに対し、シマスズメノヒエは葯と柱頭の双方が濃い黒紫色をしており、開花期には花序全体が黒っぽく煤けたように見える点で見分けることができます。
茎葉の毛の有無に関しても違いが見られます。スズメノヒエは葉身や葉鞘全体に柔らかく荒い毛が密生しているのに対し、シマスズメノヒエは葉身や稈の上部、葉鞘は基本的に無毛で粉緑色を帯びており、葉鞘の口部や花序の枝の基部にのみ長い毛が生えます。
さらに花序の小穂の配列については、スズメノヒエの枝(総)には小穂が下向きに2列(一部3列)で並ぶのに対し、シマスズメノヒエは小穂が2個ずつ対になってつくため、1つの枝に計4列となって密生する点が決定的な相違点です。
名前について
シマスズメノヒエという名前は、在来種の「スズメノヒエ」に、暖地や島嶼部(トウショブ)を経由して渡来したことを連想させるとして「シマ(島)」を冠して名づけられました。
もともとの「スズメノヒエ(雀の稗)」は、人間が古くから食用として栽培してきた穀物の「ヒエ(稗)」に草姿や実のつき方が似ているものの、粒が小さく食用にならないため、「スズメ(雀)」が食べる程度の小さなヒエに見立てて呼ばれたことに由来します。
なお、「ヒエ(稗)」は、寒さに非常に強く、冷涼な気候や高地、痩せた土地でもよく育つため、「冷えに耐える作物」という意味から転じたとされる説などがあります。
別名は、ダリスグラス(Dallis grass)、牧草として導入した時の名前で、流通名になります。
中国名は、「毛花雀稗(モウカセキハイ)」で、スズメノヒエ属(雀稗属)の中で小穂の縁に目立つ白毛が生えている特徴を表した名称です。
学名は、 Paspalum dilatatum Poir.
属名の Paspalum は、古代ギリシャ語でキビ(黍)やイネ科の穀物を指していた paspalos(パスパロス)に由来し、穀物のキビに似た実をつける植物であることに由来します。
種小名の dilatatum は、ラテン語の動詞 dilatare(拡張する、広げる)の過去分詞形に由来し、「広がった」「拡張された」「幅の広い」という意味を持っています。これは、花序の枝(総)が主軸から水平に近い角度で大きく横へ広がる姿や、幅の広い偏平な小穂の形から命名されたものです。
英名は、Dallis grass(ダリスグラス)、 Caterpillar grass 、
Dallis grassは、19世紀半ばにアメリカ合衆国ジョージア州において、南アメリカから導入された本種を乾燥や暑さに強い優れた牧草として熱心に導入・普及させた農業者A. T. ダリス(A. T. Dallis)の功績を称えて名づけられました。
Caterpillar grass は、枝にびっしりと並んだ毛深い小穂の列が、まるで毛虫(caterpillar)が這っているかのように見える外見に由来しています。
花
花期は7~10月頃で、直立した花茎(花軸)の先端近くに、長さ5~10cmほどの総(房状の枝)を3~10個(多くは3~5個前後)総状につけます。
これらの枝は主軸に対してほぼ直角に近い角度で大きく開出するのが特徴です。
枝(花軸)自体は平たく偏平で、その下面・片側に小穂が2個ずつ対をなして整然と4列に密生します。
小穂は2つの小花から構成されますが、第1小花は扁平な護穎を残して退化・不稔となっており、稔性を持つ第2小花のみが結実します。枝の付け根や小穂の縁には白色の長い毛が密に生えています。
花の大きさは、個々の小花が包まれる小穂(しょうすい)の長さで約3.5mm 幅は約2.5mmです。
花の色は、外側の苞穎は緑色から淡緑色ですが、開花時に小穂から外へ突き出る葯(やく)と雌しべの柱頭がともに濃厚な黒紫色(暗紫色)をしています。
イネ科植物特有の風媒花であるため、花弁(花びら)は退化して存在せず、外側を覆う第2苞穎や第1小花の護穎、第2小花の革質な穎(えい)が花弁の代わりとして生殖器官を保護しています。
実
果実は、イネ科特有の頴果(エイカ)です。大きさは長さ約1.8mm 幅約1.5mm前後の広卵形から円形に近く、腹面は偏平でやや背面に丸みを持った形状をしています。
実の色は、成熟すると光沢のある淡い黄褐色から乳褐色(灰褐色)になります。
タネ(種)の大きさは果実とほぼ同大で、果皮と種皮が完全に一体化して密着しています。硬く革質化した第2小花の護穎(背側)と内穎(腹側)に固く包まれた状態で散布されます。
タネの数は1つの結実した小穂の中に1個のみ含まれますが、1本の花茎に数百個、1株全体では数千個から数万個に達する極めて膨大な数の種子が生産されます。
熟した種子は風や雨、あるいは人や動物の往来、車両のタイヤに付着して容易に運ばれ、広範囲に散布されます。
葉、茎
葉の付き方は、茎に対して左右交互に規則正しく並ぶ2列互生です。
葉の大きさは、長さ10~25cm(大きなものは30cm近く) 幅は5~12mmほどで、形は細長い線形から線状披針形で、先端に向かって次第に鋭く尖り、全体としてやや粉白色を帯びた粉緑色(青緑色)になります。
葉は全縁ですが、縁に沿って微細なざらつき(小突起)があるため、触るとかすかに引っかかる感触があります。
。
茎(稈)は株元で密に束生(株立ち)します。茎の基部は地面を這うように倒伏・伏臥して節から発根することがありますが、上部は斜めから垂直に力強く立ち上がります。
茎の断面は円形からやや偏平で、中空、表面は滑らかで節の周囲を除いて無毛です。
地際付近では枝分かれが見られますが、立ち上がった花茎の上部では枝分かれせず、まっすぐ上方に伸びて頂部に花序を展開します。
基部の葉鞘口部には長い白毛が束生し、葉身と葉鞘の境目にある葉舌は長さ1.5~3mmほどの膜質となっています。
草丈は通常50~100cm程度に達し、肥沃な土地では1mを越えて大型化します。
利用
海外および日本導入初期においては、家畜(牛や馬など)の飼料となる「暖地型イネ科牧草(ダリスグラス)」として導入・利用されました。
暑さや夏期の干ばつに極めて強く、一般的な寒地型牧草が生育を停止する真夏でも旺盛に葉を茂らせるため、夏枯れを防ぐ放牧用草種や採草用として価値が見出されました。
また、根系が深く強固に発達して土壌をしっかりと抱え込む性質があるため、道路の法面(のりめん)や堤防、造成地の傾斜地における土壌流亡防止(侵食防止)や緑化用植物資材としても利用された歴史があります。
しかし、現代の日本の農村部や都市近郊においては、牧草として積極的に利用される機会は減少し、むしろ畦畔や農地周辺を侵略する厄介な外来雑草として認識される場面が増えています。
さらに、成熟期を迎えた花穂には麦角菌(Claviceps属の菌)が寄生しやすく、黒褐色の粘着性の液を出して「麦角病」を発生させることがあります。
この麦角毒には家畜に対して神経毒性をもたらすエルゴットアルカロイドが含まれるため、過剰に摂食した家畜が中毒(ダリスグラススタガーズ/ふらつき病)を起こす危険性があり、飼料管理の面からも厳重な注意が必要とされています。
繁殖を防ぐ対策
シマスズメノヒエは強靭な多年草であり、大量の種子による「有性生殖」と、地際の分げつ・頑丈な地下茎(株)による「栄養繁殖」の双方が発達しているため、一度定着すると根絶が非常に困難です。防除には発生段階や環境に応じた計画的な管理が求められます。
物理的防除としては、結実前の徹底した刈り込みが基本となります。
種子が形成・登熟する前の出穂初期(6月~7月頃)に地際近くで刈り払いを行うことで、大量の種子が土壌中に落下してシードバンク(土壌種子群)を形成するのを防ぐことができます。
ただし、シマスズメノヒエは再生能力が極めて高いため、一度の草刈りでは短期間で再び低い位置から花茎を伸ばして結実してしまいます。そのため、夏から秋にかけて年に複数回(月1回程度)の継続的な刈り取りが必要です。
また、小規模な発生地や家庭菜園、花壇などでは、地下の根株を残すと容易に再生するため、スコップや鍬を用いて地下の太い根塊ごと掘り起こして抜き取り、残渣を乾燥させて処分することが根本的な駆除につながります。
さらに、更地や休耕地などでは、遮光率の高い防草シートを隙間なく敷設し、日光を完全に遮断して株を枯殺させる方法も有効です。
化学的防除(除草剤の利用)としては、休耕地や非農耕地、道路脇などにおいて、葉や茎から吸収されて地下の根部まで枯らす「グリホサート系」などの移行型非選択性除草剤が広く用いられます。
散布の適期は、植物体全体の光合成と養分蓄積が活発で薬剤が根へと移行しやすい夏期の生育旺盛期から初秋(開花直前)にかけてです。
すでに大株に成長したものは薬剤を弾きやすいため、展着剤を加用するか、一度草刈りを行ってから新たに再生してきた柔らかい新葉(草丈20~30cm程度)を狙って散布すると高い除草効果が得られます。
花言葉、誕生花
シマスズメノヒエそのものの花言葉はまたりませんが、近縁種のスズメノヒエ属全般の花言葉として「邪魔しないで」があります。
道端や農道、田畑の畦などに一度根を下ろすと、周囲の植物を押しのけるように密な株をつくって旺盛に繁茂し、他者の侵入を寄せ付けない圧倒的な強健さと頑強な生命力に由来しているといわれます。
参照サイト
松江の花図鑑 シマスズメノヒエ
三河の植物観察 スズメノヒエ シマスズメノヒエ キシュウスズメノヒエ
身近な自然もいいね! シマスズメノヒエ
アタマの中は 花畑 シマスズメノヒエ
野山の花たち タチスズメノヒエ
お花の写真集 スズメノヒエ(雀の稗)
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