近くのスギ林のなかに、マンネンスギが生えていました。マンネンスギは地下茎を長く伸ばし、側枝を地上に伸ばして10~30cmの高さに育つシダ植物です。ここでは、ほとんど日が当たらない10m×10mほどの面積に生えており、近くにはヒカゲノカズラもみられます。
地下茎を長く伸ばすシダ植物、マンネンスギ(万年杉)
マンネンスギ(万年杉)
この植物を最初に見たときは、ヒカゲノカズラの小苗かと思いました。
ところが、時間が経過しても、茎がのびることが無く、丈が10cmほどのままなので、おかしいと思って調べ、
コケの仲間のコウヤノマンネングサではないかと思い、本年3月に記事を書きました。
専門家の方から、マンネンスギ(万年杉)との指摘を受け、新たに書き直したものです。
マンネンスギはヒカゲノカズラ科のシダ植物で、地下茎が長く伸び、そこから地上に直立した側枝が二又に分枝してたくさんの枝になり、
そこに先が尖った細長い葉をたくさんつけます。
このため、茎の基部が鱗片状になるコウヤノマンネングサとは違うことがわかりました。
Wikipediaによると、埼玉県、東京都、神奈川県、鳥取県、山口県で絶滅危惧I類に指定されています。
マンネンスギの名前は、スギの枝葉ににていて常緑であるためとする説や、コケ類のマンネングサににていることに由来するとする説、があります。
マンネンスギも、ヒカゲノカズラも、食べても美味しくないのでしょうか、鹿に食べられることがなく、スギ林の下で育っています。
草丈は10cm以下で、地下茎から伸びた茎が、上部でいくつにも二又に枝分かれしています。
また、茎や枝には長さ2.5cm以下の先が尖った葉がたくさんついています。
葉はとがっていますが柔らかく、さわっても痛くはありません。
近くに、小さなスギ(杉)の苗がはえていたので撮りました。
小さい苗ですが、まっすぐに伸びた幹から枝がでて、先端が尖った細長い葉がたくさんついており、たしかに、マンネンスギににています。
ただ、スギは幹がまっすぐ上に伸び、そこからいくつもの枝が出ている点が違っています。
このように、マンネンスギの葉は、スギの葉ににていますが、柔らかく、触ってもいたくはありません。
こちらは1月に撮ったものですが、枝の先に細長く黄色いものが1個、直立しています。
夏につけた胞子嚢穂が、胞子を飛散させてそのままのこったもののようです。
ちなみに、ヒカゲノカズラの胞子嚢穂は、枝が分岐してその先につくので、この点も違います。
この場所でマンネンスギが生えている面積は、10m×10mほどで、狭い面積に生えているだけなので、繁殖力は強くないようです。
付近では、ヒカゲノカズラがたくさん生えていますが、マンネンスギはここ以外では見たことがありません。
こちらが、マンネンスギが生えている様子です。
たくさんのマンネンスギが生えていますが、茎は地下茎でつながっており、そこから上に側枝がでて葉がついたものです。
マンネンスギの周辺を掘り起こして、地下茎と側枝をとってみました。
3本の側枝が地上に伸びていますが、それらが白く細い地下茎でつながっていることがわかるかと思います。
スギ林の中なので、スギの根も縦横に伸びていますが、その中を伸びています。
地上から見ただけでは、マンネンスギに地下茎の様子はわかりませんが、
このような形で、地下でつながって育っていることがわかるかと思います。
ここではこのように密に生えていますが、この場所が環境的に適しているようです。
身近で育てることができれば、いいのですが、難しいかもしれません。
つぎの写真は、私が最初に混同したヒカゲノカズラです。
いかがでしょうか。茶色いスギの葉の上で、茎が地面にそってのびていますが、
茎についた葉の様子は、マンネンスギにそっくりだと思います。
ただ、茎が地面にそって長く伸びるのと、枝の分岐が少ない点が、マンネンスギとは違います。
ちなみにヒカゲノカズラの茎と根は、つぎの写真のようになります。
こちらは、ヒカゲノカズラの先端部の根を引き抜いたものですが、
ご覧のように、茎が地上を伸び、その茎から白く長い根がでて茎を固定していることがわかります。
マンネンスギとヒカゲノカズラは、同じヒカゲノカズラ科の常緑シダ植物ですが、生態はこのように大きく違っています。
ヒカゲノカズラについては、記事にしていますので、こちらもご覧ください。
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こちらは、マンネンスギが育っている場所を覆っているスギの樹々です。
このような樹々の下なので、日当たりは良くなく、湿った環境が保たれているのだろうと思います。
マンネンスギの基本情報
マンネンスギ(万年杉)は、東アジアと北アメリカ大陸に分布し、日本では琉球列島を除く全土にみられるヒカゲノカズラ科ヒカゲノカズラ属の常緑シダ植物です。
マンネンスギの名前は、スギの枝葉ににていて常緑であるためとする説や、
蘚類のマンネングサににていることに由来するとする説、があります。
学名は、Lycopodium obscurum L.
英名は、princess-pine 、tree club-moss
マンネンスギは、地下に長く茎を匍匐させて主茎になり、側枝は地上に出て高さ10~30cmほどの直立茎になります。
直立茎は下部では分枝せず、上部で分枝して樹木のようになります。
葉は線形で先が尖り、地下茎と直立茎の根本から枝先までつきます。
また、直立茎の根元近の葉は茎に張り付くようにつきますが、枝先の葉は、枝から大きな角度を持って広がってつきます。
胞子嚢穂は夏ごろに小枝の先端につきます。柄はなく、長さ1~6cm、径5mmの円柱形で、1個でつきます。
参照サイト
Wikipedia マンネンスギ コウヤノマンネングサ
園芸図鑑 コウヤノマンネングサ
三河の植物観察 マンネンスギ
宮崎と周辺の植物 マンネンスギ
京都レッドデータブック マンネンスギ
桶川修 文 山と渓谷社 「くらべてわかるシダ」
海老原淳著 日本シダの会 「日本産シダ植物標準図鑑1」
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