真冬のクヌギ(櫟、椚)には、枯れ葉が落ちず、そのまま残っているものを見かけます。個体差があるようですが、これは、枯凋性(コチョウセイ)と呼ばれ、先祖が常緑性だった名残といわれます。クヌギと同じブナ科のクリ、コナラなどにも同じ現象がみられます。
冬のクヌギに残る枯葉・・・枯凋性
冬のクヌギ(櫟、椚)の葉
冬のクヌギの樹には、いつまでも枯れ葉が残っているものを見かけます。
この記事では、まずクヌギの樹がどのような樹かについて触れたあと、なぜ枯れ葉がいつまでも樹に残っているのかについて解説します。
昔からシイタケ栽培や炭の材料としてに使われてきたクヌギの樹は、成長が早く、10年程度で建材にできると言われます。また、樹液をもとめて、カブトムシやクワガタなどがよく集まる樹としても知られています。
この樹は、伐採しても切り株から萌芽更新が行われ、再び数年後には樹勢を回復します。このため、持続的な利用が可能な里山の樹木の一つとして、農山村に住む人々に利用されてきました。
また、この写真のような、大きなドングリをつけることつけることでも、よく知られています。
私も、少しだけ山に植えており、つぎの写真は、昨年の12月に撮ったものです。
先の葉は、まだ黄色っぽかったのですが、冒頭の1月の写真では、全体が茶色くなっています。
この樹は、まだ若いからでしょうか、葉は枯れたように茶色くなっていても、落ちずに樹に残っています。
枯れ葉といっても、つやつやしていて、きれいです。また、葉は、全然落ちないわけではなく、落ちてはいるが、多くが残っているということのようです。
日本植物生理学会の質問コーナー「落葉しない葉について」によると、落葉樹は普通、葉の葉柄の根元に離層という組織を作り、植物性ホルモンの働きによって、離層の形成を促進して葉を切り離すとのことです。
ところが、クヌギ、ブナ、カシワなどの落葉樹では、ハッキリとした離層を作らないそうです。
葉が落ちない性質は、枯凋性と呼ばれますが、なぜこのような離層を作らないかというと、先祖が常緑性だったためではないかと考えられているようです。
さらに詳しいことは、日本植物生理学会の、「ブナで落葉しないものあり」、「カシワの冬葉の状態について」などに掲載されています。
こちらは、去年の5月に、クヌギの新緑を撮ったものです。このころまで、古い葉が残っていました。
新しい葉が出てきて、さすがに、間もなくに落ちてしまいましたが、この時期まで残るとは、いままで知りませんでした。
こちらは、クヌギと同じブナ科のブナの樹です。枝の先についた新芽が、目だって来ていますが、このように、ブナにも古い葉がたくさん残っています。
かなり強い風が吹くのですが、しっかりとついています。
クヌギの基本情報・花言葉
クヌギ(櫟、椚)は、ヒマラヤ~中国にかけての東アジアや、日本の岩手県・山形県以南に自生するブナ科コナラ属の落葉高木広葉樹です。
名前は、古くから、国木(クニキ)、食之木(クノキ)、薪の木(クノキ)などと呼ばれていたものが、変化したのではないかと考えられています。
また、古名としては、ツルバミ(橡)、クノギ(櫟)、クノキ(椚)などがあるようです。
学名は、Quercus acutissima
英名は、Sawtooth Oak
花期は4~5月で、葉が出るのと同時に咲きます。雄花序は10cmほどの長さで柔毛が多く、新しい枝の下部から垂れ下がります。
花の直径は2.5mmくらいで、杯形になります。雌花は、新枝の中部より先の葉腋に1~3個つきます。
果実は堅果になり、直径2~2.5cmの球形で、翌年の秋に熟しますが、殻斗には螺旋状に線形の鱗片がつきます。
葉は、長さ8~15cm 幅3~8cmの長楕円形の披針形で、互生します。縁には波状の鋸歯がつき、鋸歯の先は尖ります。
樹高は15~20m、直径は60cmほどになります。樹皮は灰褐色で厚く、不規則に剝れます。
よくにた樹に、コルククヌギ、ワタクヌギとも呼もばれるアベマキがあります。
成長がはやく、10年程度で建材に使用できるそうですが、椎茸の原木栽培用の榾木(ホダギ)や炭の材料としても利用されてきました。
クヌギの花言葉は、「おだやかさ」で、10月16日の誕生花です。
参照サイト・書籍
木のぬくもり・森のぬくもり クヌギ
日本植物性生理学会 落葉しない葉について ブナで落葉しないものあり カシワの冬葉の状態について
弥生おばさんのガーデニングノート「花と緑の365日」 クヌギ
高橋秀男校閲 池田書店 「葉っぱ・花・樹皮でわかる樹木図鑑」
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