一重咲きのクチナシ(梔子)は、6~7月ごろに白い花を咲かせ、つけた実は10~11月ごろになるときれいなオレンジに熟します。いい香りの花を咲かせ、実は古墳時代から染色用色素として使われてきました。食品のいろ染めなどにも使われ、薬草としても利用されます。
初夏に白く咲き、秋に実がオレンジに熟す一重咲きのクチナシ(梔子)
クチナシのオレンジの実
クチナシ(梔子)の樹にオレンジの実がたくさんついていました。(写真は、大阪公立大学植物園で撮らせていただきました。)
大城さは、長さ2~3cmの楕円状で、樹全体についた様子はきれいで目を引きます。
ヒヨドリ、ムクドリなどによって食べられるといわれますが、この写真をとった1月初めにはまだ食べられてないようです。
上向いてついているクチナシの上に長くのびているのは萼片で、その下に縦方向に稜がついたオレンジの部分が実になります。
普通、萼片は実の下につきますが、クチナシは大きく発達して実を覆うほどになっているということでしょうか(私的解釈です)。
このためでしょうか、実が割れることがないので、クチナシと呼ばれるようになったといわれます。
普通、植物の実は割れて種を放出しますが、クチナシは種の放出はないようです。
どのようにして種を蒔くのか、不思議ですが、よくわかりませんでした。
ただ、クチナシには一重咲きと八重咲きがありますが、実がつくのは一重咲きだけになりますが、つぎのようない特徴があります、
- 花が、いい香りがする。ジンチョウゲ(沈丁花)、キンモクセイ(金木犀)とともに三大香木などと呼ばれます。
- 黄、赤、青などの染色用色素がとれ、食用品のいろづけなどに使われます。
- 乾燥した実は、漢方薬として使用されます。
1.クチナシは、6月ごろから咲き始めますが、ジャスミンににたと言われる独特の香りがして人をひきつけます。
2.また、お節料理の栗金団(クリキントン)を黄色く着色するために用いられたり、サツマイモ、タクアン、ラーメンの麺の着色などにも使われるようです。
染色用色素としては、古墳時代から使われていたといわれ、長く使われてきたようです。
黄色い色素はクロシンと呼ばれるカルテノイド(天然色素)で、水で茹でると溶け出すため、他のものを手軽に染めるとができるということのようです。
カルテノイドは黄緑色野菜などにも含まれる色素で、油性のものが多いようですが、クロシンは水溶性なのが特徴のようです。
また、普通は黄色の色素として使われますが、実からの抽出物に酵素処理を行うことにより、赤や青の色素も作ることができます。
そして、いろを混合することによっていろんな色をつくることができ、お菓子などに使われているようです。
栗きんとんの着色に使われる乾燥したクチナシは、生のものとは印象が違います。
3.口がないといわれるクチナシですが、実を乾燥したものは、山梔子(サンシシ)や梔子(シシ)と呼ばれ、漢方薬として使われています。
ここでは、1.2mぐらいの高さの樹にたくさんの実がついていました。
なぜか黄色いものも多いようですが、きれなオレンジも見られ、目を引きます。
もう一つ、クチナシの実は、将棋盤の足のデザインに使われています。
あまりいい絵ではないのですが、将棋盤のしたについている足は角ばって稜がついており、クチナシの実の形にデザインされています。
これは、将棋の対戦者や観戦者が、口を利かないようにとの意味を込めて作られているのだそうです。
おもしろいですね、将棋の場では話をすることは慎まなければならないようですが、
クチナシの実をデザインにつかうとは・・ (*^m^*)
クチナシも鼻が高いでしょうね。
クチナシの白い花
クチナシの花は、写真のように白くて清楚な花です。
花の大きさは、5~8cmほどで、花びらの根元は筒状になっていて、さきが5~7枚に分かれます。
雄しべは割れた花びらの数と同じで(写真では6個)で、中心に黄色いこん棒のような雌しべがついています。
花からはジャスミンににたいい香りがでますが、もちろん人のためではなく、昆虫を呼びよせるために出しています。
花の香りは、普通花びらから出ることが多いといわれますが、雄しべや雌しべの付け根に蜜腺がある場合もあるようです。
クチナシの香りはどこから出ているのでしょうか。調べましたが、よくわかりませんでした。
ご存じのかた、教えていただければありがたいです。 m(__)m
また、この花は、咲いた当初は白ですが、時間とともに黄色く変化します。
さきにも書きましたが、八重咲のクチナシもあります。
花は豪華できれいで、花の点ではこちらの方が見栄えがするように思いますね。
実をつけるほうがいいか、花がきれいな方がいいのか、迷うところですが、実をつける一重咲きは魅力的のように思います。
花言葉は、「とても幸せです」「喜びを運ぶ」「洗練」「優雅」で、5月6日、6月7日、6月30日、7月7日の誕生花です。
「とても幸せです」は、クチナシを贈られた女性の気持ちを表しているといわれ、
「喜びを運ぶ」は、花が咲くと漂ってくるいい香りに由来するようです。
クチナシの葉や樹
クチナシの葉は枝に対生し、革質で光沢があってきれいです。
大きさは長さ5~12cm 幅2.5~5cmほどの長楕円形で先が尖っており、葉脈が目立ちますが、縁にギザギザはみられません。
花や実もきれいですが、葉も艶々してきれいです。
クチナシは、写真のように根元から何本も幹を出して株立になります。
樹高は1~2mと、それほど大きくならないのも庭木に向いています。
清楚な花を咲かせ、オレンジのきれいな実をつけるクチナシ、できれば庭に植えたい魅力的な樹だと思います。
クチナシの基本情報・花言葉
クチナシ(梔子)は、インドシナ半島、中国、台湾、朝鮮半島や、日本の静岡県以南から南西諸島に自生するアカネ科クチナシ属の常緑低木広葉樹です。
山地に自生しますが、庭木や公園樹などによく植えられています。
クチナシには一重咲きと八重咲があり、どちらもいい香りがしますが、実をつけるのは一重咲きで、オレンジの実をつけます。
名前は、実が熟しても割れないため、口が無いようだとしてクチナシとなったとする説や、
実の上部についた萼をクチ(口)とし、実の部分をナシ(梨)のようだとしてつけられたとする説、などがあります。
将棋盤の足はクチナシの稜のある実をイメージして作られていますが、対局及び観戦者は、無言で臨むべきとの意味が込められているようです。
漢名は山梔(サンシ)ですが、漢字では梔子と書きます。
別名は、センプク。
学名は、Gardenia jasminoides
英名は、common gardenia
花期は6~7月で、枝の先に、直径5~8cmのいい香りのする白い花を1つ咲かせますが、一重咲きの方が早く咲き出します。
また、先始めは白く咲きますが、しだいに黄色く変化します。
ジンチョウゲ(春)、クチナシ(夏)キンモクセイ(秋)とともに、いい香りがするため、「三大芳香花」、「三大芳香樹」、「三大香木」などと呼ばれます。
萼や花冠は根元が円筒状になっていて、先端が5~7裂します。
実は肉質の液果で、長さ2~3cmの楕円状で、5~7稜あり、先端に萼片が残ります。
10~11月ごろにオレンジ色に熟しますが、割れ(裂開)ません。中には長さ4mmほどの卵形や広楕円形の種が90~100個入っています。
葉は対生または3輪生し、長さ5~12cm 幅2.5~5cmの長楕円形で先が尖り、革質で全縁です。
樹高は1~2mになり、樹皮は灰褐色になります。
実を乾燥したものは、薬効があって山梔子(サンシシ)または梔子(シシ)と呼ばれる漢方薬になります。
また、染色用色素として、古墳時代から使われてきたといわれます。
食用の天然色素として、栗きんとん、サツマイモ、タクアンなどを黄色く染めるのに使われています。
クチナシの黄色い色素はクロシンと呼ばれる水溶性のカルテノイド(天然色素、油性が多い)で、水で茹でると溶け出して他のものを染めるとのことです。
また、クチナシの色素は黄色だけでなく、赤や青の色素も酵素処理などによってつくりだすことができ、利用されているようです。
花言葉は、「とても幸せです」「喜びを運ぶ」「洗練」「優雅」で、5月6日、6月7日、6月30日、7月7日の誕生花です。
「とても幸せです」は、クチナシを贈られた女性の気持ちを表しているといわれ、
「喜びを運ぶ」は、花が咲くと漂ってくるいい香りに由来すると言われます。
参照サイト・書籍
Wikipedia クチナシ
季節の花 300 梔子
学芸の森 クチナシ
神戸化成株式会社 色鮮やか!クチナシ色素のグラデーション
日本植物生理学会 花の香りは花のどの部分から出るのですか?
花言葉-由来 クチナシ
高橋秀男校閲 池田書店 「葉っぱ・花・樹皮でわかる樹木図鑑」
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