ヤブコウジ(藪柑子)は、十両やヤマタチバナ(山橘)などとも呼ばれ、万葉の時代から親しまれてきた常緑低木です。冬に綺麗な赤い実をつける魅力的な植物で、正月飾りなどでおなじみです。ここでは、よくにた近縁種のツルコウジ(蔓柑子)との違いについてもまとめました。
赤い実が綺麗なヤブコウジ(十両、ヤマタチバナ)、ツルコウジとの違い
ヤブコウジの実
冬に艶のあるきれいな赤い実をつけ、正月の寄せ植えなどに使われるヤブコウジ(藪柑子)は、
万葉集ではヤマタチバナ(山橘)の名で読まれ、古くから親しまれてきました。
茎の高さは20cmほどと小さく、葉の近くから伸びた果柄に、
5mmほどのちいさな赤い実を数個つけており、
冬枯れで殺風景ななかで、目を引きます。
実の形は、リンゴやサクランボのように感じますが、
昔の人は柑橘類の実をイメージして名をつけたようです。
ヤブコウジは、藪のようなところに生え、実の形が柑橘類のコウジ(柑子)ににているとして名づけられ、
ヤマタチバナの名前も、柑橘類のタチバナ(橘)に由来すると言われます。
またの名は、ジュウリョウ(十両)で、
センリョウ(千両)やマンリョウ(万両)と同じように赤い実をつけることから
つけられたようです。
両と名づけられた植物には、一両(アリドウシ)、百両(カラタチバナ)、億両(ミヤマシキミ)などがあり、
いづれも冬に赤い実をつけ、縁起物とされます。
ヤブコウジの花
花期は7~8月ごろで、
5mmほどの白い5弁の花を下向きに咲かせます。
葉腋から伸びた15mmほどの花序柄の先に、2~5個の花をつけますが、
小さく、葉に隠れがちなのであまり目立ちません。
ヤブコウジは、花より実が主役の植物といえそうです。
花言葉は、「明日の幸せ」で、12月30日の誕生花です。
目立たずに花が咲き、きれいな実をつけることからつけられたのでしょうか。
希望を持たせてくれるいい花言葉ですね。
ヤブコウジの茎と葉
地面から直径2mmほどの茎が枝分かれすることなく上にのび、
その先に葉や実がついています。
ヤブコウジは地下茎が長く伸び、そのさきから地上茎が立ち上がります。
一見すると草本のように見えますが、常緑低木に分類されています。
葉は、長さ4~13cm 幅2~5cmの長楕円形状で先が尖っており、
縁に細かな鋸歯が見られますが、表面は光沢があり毛は見られません。
また、写真のように、茎の上部の節に3~4枚が輪生状に互生してつきます。
ヤブコウジは、江戸時代ごろから古典園芸植物として栽培され、
斑入りの品種などがつくられてきました。
突然変異した株を育てたもののようですが、趣があって楽しませてくれます。
ヤブコウジ(藪柑子)とツルコウジ(蔓柑子)の違い
ヤブコウジの近縁種にツルコウジ(蔓柑子)があり、見間違うこともあるようです。
ツルコウジは、千葉県以西に分布する常緑低木で、茎は地上を横に這い、丈は10~15cmほどになります。
花期は6~8月ごろで、ヤブコウジによくにた白い花をつけ、5~6mmの実は秋に赤く熟します。
葉は、長さ2~6cm 幅1,.5~3cmの卵形から長楕円形で、縁に粗い鋸歯がありますが、
葉の両面や葉柄に軟毛が見られます。
両者の違いを以下にまとめました。
ヤブコウジ | ツルコウジ | |
茎の伸び方 | 地下茎 | 地上茎 |
葉や葉柄の軟毛 | 無し | 有り |
分布 | 奥尻島以南 | 千葉県以西 |
樹高 | 10~30cm | 5~10cm |
ヤブコウジの基本情報・花言葉
ヤブコウジ(藪柑子)は、中国、台湾、朝鮮半島や、北海道の奥尻島以南に自生するサクラソウ科ヤブコウジ属の常緑小低木です。
日陰を好み、日当たりのあまりよくない場所に生え、冬に赤い実をつけ、縁起物として正月の寄せ植えなどに使われます。
名前は、山地の藪のようなところに生え、柑子のような丸い実をつけることに由来します。
別名は、ヤマタチバナ(山橘)で、万葉集にも読まれています。
センリョウ(千両)やマンリョウ(万両)などに対して、十両とも呼ばれます。
学名は、Ardisia japonica
Ardisiaの語源は、ギリシャ語のardis(槍先)で、雄蕊の葯の形状に由来すると言われます。
英名は、Spearflower、Shoebutton ardisia
Shoebuttonは、マンリョウと同属のセイロンマンリョウを意味します。
花期は7~8月で、前年枝の葉腋に散形状の花序になって、直径5~6mmの白い花を2~5個つけます。
花序柄は1.5cmほど、花弁の先は5つに分かれ、雄しべが5個、雌しべが1個つき、下向きに咲きます。
花は白くて小さく、葉に隠れるため、あまり目立ちません。
実は直径5~6mmの大きさの核果で、10~11月ごろに赤く熟します。
葉は長さ4~13cm 幅2~5cmの長楕円形状で先が尖り、縁に鋸歯がついており、
茎の上部の節に3~4枚が輪生状につきます。
茎は、細い地下茎が横に伸び、先が直立して高さ10~30cmほどの地上茎になります。
万葉の時代から親しまれてきた植物で、正月用の縁起物としても欠かせないものとなっています。
葉や茎にベルゲニンを含んでおり、民間薬として利尿や咳止めに用いられてきました。
花言葉は、「明日の幸せ」で、12月30日の誕生花です。
よくにた植物に、同じヤブコウジ属のツルコウジがあります。
千葉県以西に分布する常緑低木で、茎は地上を横に這い、丈は5~10cmほどになります。
花期は6~8月ごろで、ヤブコウジによくにた白い花をつけ、5~6mmの実は秋に赤く熟します。
葉は、長さ2~6cm 幅1,.5~3cmの卵形から長楕円形で、縁に粗い鋸歯がありますが、
葉の両面や葉柄に軟毛が見られます。
ヤブコウジとの違いは、茎が地上で伸びること、葉や葉柄に軟毛をつけることなどです。
参照サイト・書籍
みんなの趣味の園芸 ヤブコウジ
366日・誕生花の辞典 ヤブコウジ
三河の植物観察 ツルコウジ
天草の植物観察記 ヤブコウジとツルコウジ
城川四郎他 解説 山と渓谷社 「山渓ハンディ図鑑5 樹に咲く花」
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