ツタ(蔦)は、日本全土に自生する落葉性のツル性植物で、若葉や紅葉がきれいなため、建物の壁面などに這わせて育てられます。ツルから伸びた巻きヒゲの先に吸着盤をつけ、岩や樹などにしっかりとくっついて伸びます。平安時代には樹液を煮詰めて甘味料にしたといわれます。
秋に紅葉し、黒い実をつけるツタ(蔦)
ツタの紅葉
いまは、葉も落ちてしまっていますが、11月の中ごろはこのようにきれいな赤いいろでした。
ツタと聞くと、「ツタの絡まるチャペルで祈りをささげた日・・」でおなじみの、ペギー葉山の学生時代を思い出します。
有史以前に渡来したと言われるツタは、日本全土に自生するといわれますが、
春の元気な若葉や、秋の紅葉がきれいなので、建物の壁などをはわせるためによく植えられています。
一方、花は6~7月ごろに黄緑色の小さな花を花序になって咲かせますが、
あまり目につかず、葉の方がよく知られています。
冒頭の写真は、とある田舎で見かけた小屋に生えたツタですが、風情があってきれいですね。
このように、ツタはあちこちで、建物や、岩やコンクリ―トなどに広がって伸びているのをよく見かけます。
名前の「ツタ」は、このように、樹や岩などをツタって育つことに由来するようです。
近くで見ると、ツルがコンクリートを縦横に伸び、真っ赤や緑を帯びた赤い大小の葉が、独特の色合いを出しています。
ツタの若葉
こちらは、4月にとった若い葉です。
茶から薄い緑のきれいなグラデーションで、光沢のある若葉に勢いを感じます。
春にしか見られない初々しい姿で、元気をもらいます。
こちらは根元に近い葉ですが、葉が開き、いろも緑にかわっています。
よく見ると、茎から伸びた巻きヒゲの先に丸い吸盤がついて、コンクリートにくっついているのが見られます。
吸盤の部分を拡大してみました。
茎から伸びた巻きヒゲの先についた4~5個の吸盤が、しっかりと壁にくっついているのがわかります。
このように吸盤でくっつくので、壁などの平面にも広がっていくことができます。
この点が、気根で他のものにくっつく常緑性のキズタ(木蔦)や、セイヨウキズタとは、違う点のようです。
つぎの写真は、10月末のツタの様子です。
撮るのが遅かったので少し赤みを帯びていますが、
このように季節によって壁のいろがかわるのも、いいものだと思います。
ツタの実
ツタは、6~7月ごろに、目立たない小さな花を咲かせますが、
花のあとには、直径5~7mmほどの球形の実をつけ、11月ごろに黒く熟します。
そしてその表面には、写真のように白い粉がつきます。
実は食用にはなりませんが、落葉後もそのまま残っているのを見かけます。
小屋やコンクリートの壁面などに広がって伸びるツタの葉は、四季に応じて変化し、楽しませてくれます。
ツタの基本情報・花言葉
ツタ(蔦)は、アジアから北アメリカに15種類自生し、日本では一種類で、日本全土に自生するブドウ科ツタ属のツル性の落葉性木本です。
中国や朝鮮半島にも分布し、有史以前に日本に渡来したといわれます。
名前は、樹や岩などをつたって育つことから、この名前がつけられました。
別名、アマヅラ、ナツヅタ、モミジヅタ。
平安時代に樹液を煮詰めて「甘葛煎(アマカラセン)」と呼ばれる甘味料を作ったことからアマズラ(甘蔓)、
常緑性のウコギ科のキズタをフユズタと対比して落葉性のツタをナツヅタと呼び、
葉の形がモミジににているとしてモミジヅタ、と呼ばれたようです。
学名は、Parthenocissus tricuspidata
英名は、Boston Ivy,、Japanese Ivy
花期は6~7月で、短い枝の節から出た集散花序に、花びらが5枚で、直径3mmほどの黄緑色の花を咲かせます。
実は直径5~7mmほどの球形で、11月頃に黒く熟し、表面に白い粉がつきます。
水分を含みますが食用にはならず、落葉後もしばらくは枝に残ります。
種は黒褐色の楕円形で、3~5mmほど、一つの実に1~3粒ずつ入いります。
葉は直径5~20cmで、表面は光沢のある鮮やかな緑色で、葉の縁には鋸歯がつきます。
葉には長い柄があってツルに互生し、葉の大きさや形は枝によって異なります。
短い枝の葉は長さ5~15cmと大き目で、先端が2~3裂します。
長い枝の葉は少し小さく、切れ込みのないものや、1~3裂するもの、3小葉のものなどが混じります。
ツルは、葉に対生して出る巻きヒゲの先に丸い吸盤がつき、樹や壁などにくっついて伸び、
長さ10m、直径3~5cmほどに成長します。
新緑や紅葉がきれいなので、建物や堀の壁に這わせるために植えられることがあるようです。
花言葉は、「永遠の愛」「結婚」で、11月17日の誕生花です。
ツタは、生命力が強くなかなか枯れないという特徴があることから「永遠の愛」、
ツルの先に吸着盤をつけて壁などにしっかりくっつくことが、男女の結びつきを連想して「結婚」とつけられたといわれます。
参照サイト・書籍
Wikipedia ツタ
庭木図鑑 樹木ペディア ツタ
松江の花図鑑 ツタ
季節の花 300 ツタ
Green Snap ツタの花言葉
Chills Laboratory ツタ
高橋秀男校閲 池田書店 「葉っぱ・花・樹皮でわかる樹木図鑑」
関連投稿
-
-
キヅタ(木蔦)は、冬にも葉をつける常緑つる性木本
キズタ(木蔦)はフユズタ(冬蔦)とも呼ばれる常緑つる性植物で、樹などをつたってのびた蔓につく葉は、冬にもきれいな緑いろをしています。落葉性のツタ(蔦)にたいして、ツルが太くなって木質化するため、キズタ ...
-
-
セイヨウキズタ(西洋木蔦、アイビー)は、大きな葉のツル性常緑植物です
セイヨウキズタ(西洋木蔦、アイビー)は、大きな葉をつけ、グランドカバーや鑑賞用に栽培されますが、成長が著しいため、管理を怠ると他の植物や庭園を覆ってしまう事があり、注意が必要です。ユーロッパや西アジア ...
-
-
黒い実がなる植物30種~ブログ記事から~
身近に見る、黒い実がなる植物30種類をまとめました。写真に簡単な説明をつけて、アイウエオ順に表示していますので、植物の名前を調べるための参考にしていただけるものと思います。 黒い実がなる植物30種~ブ ...