ユズリハ(楪、譲葉)は、福島県以南で自生するユズリハ科の常緑高木で雌雄異株です。新芽が出た後、譲るように古い葉が落ちるため、家が代々続くことを象徴する縁起のいい植物として正月の鏡餅や門松に使われます。ここでは、山で育つユズリハについて書きました。
正月飾りに使われる縁起のいいユズリハ(楪、譲葉)
ユズリハの新葉
冒頭の写真とこちらの写真は、以前5月に撮ったものです。 赤みを帯びた新葉が出てきたところで、濃い緑の古葉との違いがよく分かります。
新葉は、枝の先に広がってたくさんつき、赤みを帯びて、きれいです。
毎年、この葉をみると春の勢いを感じます。 葉の色は、時間とともに緑に変わっていきますが、その変化を見ているのも、楽しいものだと思います。
やがて、新しい葉が大きくなるにつれて古い葉が落ち、新しい葉に入れ替わります。
ユズリハ(楪、譲葉)の名前は、このように葉が入れ替わる様子を、 親が子に家を譲って代々引き継いでいくことに見立てて、つけられたといわれます。
そういう意味で縁起がいいとされ、正月の鏡餅や門松などに飾られるようになったと言われます。
(地方によって使われないところもあるようです。) いまも、門松を飾るお宅では使われるようです。
ユズリハの実
花は5~6月ごろに咲きますが、 8月ごろ、雌の樹(ユズリハは雌雄異株)に、黒い実をたくさんつけていました。
このころは、まだ小さな実だったのですが、
11月の中頃、たぶん熟したであろう実が落ちていました。 このように種がたくさん落ちて、増えることになります。
林の中のユズリハ
日陰に強い樹で、写真のように、杉檜の人工林のしたでもたくさん生えているのを見かけます。
また、ユズリハは、有毒なので、鹿もあまり食べない(たまに、樹皮が食べられているのは見かけます。)ので、 たくさん育っているようです。
ユズリハの利用
ユズリハは、先に述べたように、正月の飾りにつかわれますが、 地方によっては、食べることもあります。
ユズリハアルカロイドという成分を含んでいるので有毒ですが、 熱を加えて処理すると食べることができるそうです。(林宏著 「吉野の民俗誌」)
食べることができるからでしょうか、 正月菜(ショウガツナ)とも呼ばれます。
(ただし、不用意に食べないようにしましょう。) 栄養的にはどうなのかよくわかりませんが・・ (*^^*)
ユズリハ(楪、譲葉)の基本情報・花言葉
ユズリハは、中国、韓国、日本の福島県以西に自生する、ユズリハ科ユズリハ属の常緑高木で、雌雄異株です。
ユズリハの名前は、春に若葉が出ると古い葉は落下して入れ替わることから「譲葉(ユズリハ)」となったと言われます。
別名は、オヤコグサ(親子草)、ショウガツナ(正月菜)など。
このため、世代交代がうまくいくことの象徴とされ、縁起がいいとして、 正月の鏡餅や門松の飾りに使われたり、庭木としても植えられます。
学名は、Daphniphyllum macropodum
花期は4~6月で、葉腋から4 ~8 cmの長さの総状花序で、黄緑いろの小さな花をたくさんつけます。
果期は6 ~12月で、枝先に長さ15 ~20 cmの果実をつけ、10~11月に黒く熟します。
葉は互生し、枝先にらせん状に集まってつきます。
葉は光沢があり、長さ8 ~20cmほどの長楕円形~倒披針形で、先端は短く尖ります。
葉の裏側は白みを帯び、葉柄は長さ8~ 20 cmで赤みを帯びます。
樹高は4 ~10mで、樹皮は灰褐色から茶褐色で、縦に筋が入ります。
仲間に、ヒメユズリハがあります。 ユズリハと同じ雌雄異株の常緑高木で、樹高はユズリハより高くなりますが、葉は小さくなります。
ユズリハは、春に葉が入れ替わることから世代交代がうまく行われるとして縁起物とされ、正月飾りに使われます。
ただ、ユズリハの葉や果実には、ダフニマクリン、ダフニフィリン、ユズリミンなどのアルカロイドが含まれ、 家畜が食べて中毒を起こすことがあるので、注意が必要です。
有毒なので山の中では鹿などに食べられることがなく、繁殖しています。
ただ、うまく処理すれば無毒化できるようで、当地では、ユズリハを正月菜と呼ばれて食用にされてきたようです。
例えば、昭和55年発行:林宏著:「吉野の民族誌」には、調理の方法が載っています。
近縁種に、ヒメユズリハとエゾユズリハがあります。
ヒメユズリハ(姫譲葉)は、九州南部以南に分布するユズリハ科ユズリハ属の常緑高木で、ユズリハより小さな葉をつけます。
エゾユズリハ(蝦夷譲葉)は、北海道、本州中北部の日本海側に分布する常緑低木で、雪に対応した変種です。
なお、ユズリハは、樹皮や葉を煎じた生薬として使われてきたといわれます。
木材は、漆器の生地、箱やろくろ細工などに使われると言われます。
花言葉は、「若返り」「世代交代」「譲渡」。
参照サイト・書籍
文化出版局 林宏著 「吉野の民俗誌」 amazon
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